肖像権裁判、控訴審でも選手側が敗訴

プロ野球選手の氏名や肖像の使用許諾権が球団と選手のどちらに帰属するかが争われた訴訟で、知的財産高等裁判所(知財高裁)が、球団側に使用許諾権を認める東京地方裁判所(東京地裁)の原判決(2006年8月)を支持し、控訴を棄却した。選手側は上告を検討する。
訴えたのは、巨人の上原浩治投手やヤクルトの宮本慎也内野手ら33選手(引退、移籍者を含む)。所属する10球団(ソフトバンク楽天は提訴の年に新規参入したため被告になっていない)を相手に、肖像権の使用許諾権限は球団にないことの確認を求めた。
1審の判決では、球団の肖像権ビジネスから生じる利益の分配金を選手が得ている現実などを踏まえ、「選手は(中略)肖像権、著作権等のすべてが球団に属し、また球団が宣伝目的のためいかなる方法でそれらを利用しても、異議を申し立てないことを承認する」「これによって球団が金銭の利益を受けるとき、選手は適当な分配金を受けることができる」とした統一契約書第16条を妥当とし、選手側の主張を退けた。
控訴審で選手側は、日本プロ野球選手会(JPBPA)の宮本慎也会長、古田敦也前会長が当事者尋問で法廷に立ち、選手600人以上の陳述書も集めるなど、現場の声を前面に打ち出す戦術をとったが、中野哲弘裁判長は「1951年に統一契約書が作成された事情などを総合的に勘案すると、選手が球団に対し、氏名および肖像の使用を独占的に許諾したものと解するのが相当」と判断。16条の規定は民法独占禁止法のいずれの観点からも「公序良俗に反するとはいえない」とした。また、選手側は「16条の“宣伝目的”とは広告宣伝のことで商品化目的は含まれない」と主張したが、判決では「名前や肖像の商品化など商業的利用権(パブリシティー権)も含まれる」とされた。
球団側代理人の吉田和彦弁護士は「球団が、商業的使用・商品化型使用を含め、選手の氏名および肖像の使用について独占的使用許諾権限を有することが改めて認められた。長年の慣行を尊重した妥当な判決と考える」とコメント。一方、選手会の山崎卓也顧問弁護士は「立証は尽くしたので、こちらの主張が認められると予想していた。米国や韓国で認められていることを考えると、非常に残念。こういう判断が定着してしまうのは、我が国のプロスポーツにとって良いのか。個人的にはこれで諦めてはいけないと思っている部分はある。上告するかは選手会の幹部とよく話し合って決めたい。判断が出るに至った理由を詳細に検討し、対応を練らないといけない」と語った。