ソフトバンクのパウエル獲得にオリックスが異議

ソフトバンクが、昨季限りで巨人から自由契約になったパウエル投手との契約が合意に達したと発表。これに対して、11日に同投手の獲得を発表していたオリックスは「球界の良識、ルール、マナーの根源を揺るがす事態」と反発し、パ・リーグ連盟に文書で異議を申し立て。30日に東京都内のリーグ事務局で小池唯夫会長らが両球団の代表者から事情を聴取し、善後策を話し合うが、不調に終わった場合、オリックスはリーグ会長に裁定を求めて提訴するほか、最終的には法的手段も辞さない構え。
両球団によると、オリックスはパウエルの自署入りの統一契約書を22日朝にFAXで受信。米国での2度の身体検査で昨年に手術した右膝に異常が見られたため慎重に最終交渉を進めていたが、ソフトバンクの動きに気付いてパウエル側に連絡を取ったところ音信不通になったという。一方、ソフトバンクはパウエルがオリックス支配下登録選手としてリーグから公示されていないことから、球団独自の調査を行い、正式契約に至っていないと判断。今月中旬から本格的な獲得交渉に入り、身体検査も済ませ、先週後半に担当者が渡米して契約を締結した。これまで外国人選手との契約は、統一契約書の写しに署名することで仮契約とみなし、来日後に正式契約を結んで連盟に提出するのが一般的で、仮契約後は他球団は手を出さないのが慣例化していただけに、今回のソフトバンクの手法は極めて異例。
オリックス中村勝広球団本部長は「寝耳に水で唖然としている。契約の盲点を突かれた。まさに前代未聞。こんなことが許されていいのか。パウエル、代理人、そしてソフトバンク球団に憤りを感じる。パウエルは二重契約であり、ソフトバンクは獲得を取り下げてほしい」と批判し、パウエルの署名が入った統一契約書の写しやオリックスの選手として法務省が日本滞在を許可した在留資格認定証明書も公表したが、ソフトバンクの竹内孝規球団常務取締役兼最高執行責任者(COO)は「周辺確認も行った。問題はないと思うから契約している。うちは統一契約書への署名、押印を済ませている。仮に問題があればパウエル側との問題。(他球団とは)営業、経営面で協力することがあっても、勝つための編成案件は全て競争。日本では統一契約書が正式な所属を決定づける唯一無二の存在であり、署名と押印を貰うまでがスカウト活動」と契約の正当性を強調。パの村田繁事務局長は「パウエルは支配下登録選手でないため、野球協約に則った扱いができない」と裁定には否定的な見方を示したが、「この先、大変な問題になることも予測されるので、解決に向けてやっていこう、ということ」と語り、話し合いによる円満解決を望んでいる。